デザイナーは3回転職して一人前!?
「早くデザイナーとして一人前になりたい」
20代30代、若手デザイナーであれば誰しも考えることだと思います。
筆者も20代の時にはそう思っていましたし、同世代のデザイナーさんもそう考えるている人が殆どでした。
ですが、
「一人前のデザイナーとは?」
どのようなデザイナーさんを指すのでしょうか?
いざどうなれば一人前なのだろうか?と考えると、こうなれば良いんです!と即答できないデザイナーさんは多いです。
ただ漠然と一人前のデザイナーを目指していても、効率が悪いだけで無く、全く成長出来ずにいつまで経っても「半人前」扱いを受けてしまうかもしれません。
なので、今日は「一人前のデザイナーになるには、どの様な経験を積めば良いのか?」
一緒に考えてみましょう。
スキルアップを目指すだけじゃ1人前にはなれない?
キャリアアップを考える時に、日本人は特に「技術(スキル)」にフォーカスする傾向にあります。
一人前デザイナーのになるためには
「もっと良いデザインを出来る様にならなきゃ!もっと作業スピードを上げなきゃ!」
と多くの人がスキルアップに励むのです。
私も20代の頃はただひたすらに、自分自身のスキルアップに励んでいたのですが、それでもなかなか周りから一人前扱いをされずに辛かった経験があります。
「なんでこんなに頑張っているのに自分はダメなんだろう」
そう落ち込むこともありました。これって若手デザイナーあるあるですよね?
当時は気が付かなかったのですが、今ふり返るとデザイナーとして自立する為にはデザインスキル以外にも実はもっと大切なことがあります。
5回の転職を経験し、30代半ばになりようやくその事に気がつきました。
どんな環境でも自分なりのデザインできる度胸と自信を持つこと。
これがすごく大事なんです。
それを体得するのに必要なことが、タイトルにある通り「デザイナーは3回転職して一人前」です。
実はこれは良く海外のデザイナーさんが口にする言葉なのですが、長いデザイナー生活と転職経験を経て身を持って理解できました。
詳しく話すとどういう事なのか?
まずは一人前デザイナーの定義からお話ししようと思います。
一人前デザイナーの定義とは?
◆何時でも転職出来る自信がある
◆個人で仕事を受注出来る
◆年収600万円以上
◆将来への過度な不安がない
◆クライアントや上司へ上手にNoを言える
上記事項に少なくとも3つ以上イエスと答えられたらきっと「一人前デザイナー」と自負して良いでしょう。反対にどれにもイエスと回答出来ないのであれば、やっぱりまだ一人前ではないはずです。
上記項目をみて不思議に思う人もいるかも知れません。「デザインスキル」に関する項目がありません。
これには理由があります。
「良いデザインとは何なのか?」という問いと同じ様に「一人前のデザイナーとして必要なスキルは何なのか?」という問題は環境によって変わってしまいます。
分かり易い例で言うと、筆者はフランスで3年間働いていた経験があるのですが、それまで日本のデザイン会社で教えて貰っていた「良いデザイン」のルールが通用しないと感じることが多々ありました。もちろん全てが全て通用しない訳ではないのですが「やっぱり文化によって感性が違うんだ」と感じずにはいられませんでしたね。
国が違えば当然良いと感じる部分に違いがあっても当然です。ですが、同じ日本の中であっても実は会社によって「良いデザイン、求められるスキル」は大きく変わります。私達が今働いている会社は言わば1つの小さな村と一緒です。特殊なご当地ルール満載な環境なのです。
なので、そんな小さな村の中で求められるルールに中でデザインスキルをただ磨いていても、一歩その村から外に出たら全く通用しないデザインスキルだったと言うことが起きても全然不思議ではありません。
誤解して欲しくは無いのですが「どんな環境でも通用する万能なスキル」なんてものはありません。
村から一歩出てしまったら市場価値が無いスキルであってもそれ自体ユニークでとても価値あるものです。また、他のスキルと掛け合わさって、デザイナーにとってすごい強力な武器になる可能性は大いにあります。今いる環境でスキルアップを目指すのは必ず必要なステップであることも間違いありません。
ここであげた「一人前デザイナーの定義」で1番言いたい事はデザインスキル以外にも、一人前のプロとして常に仕事に困らない状態にする為には、ビジネスパーソンとして身につけて置くべき経験値とメンタリティーがあるということです。
これからの時代に必要なデザイナーとしての適応能力とは?
「デザイナーは3回転職して一人前」と海外では良く耳にするのですが、まだ日本ではそれほどこの考え方は浸透していないと感じます。それは日本が遅れているという訳では無く、寧ろ今まで恵まれた環境だったからだと思います。新卒一括採用や終身雇用の文化が根強く、一旦入社した「村」の中でルールに従い、淡々と求められる事を荒波をたてず真面目にやっていれば生活が保証されてきました。これ、実は凄い事なんですよね。
ですが、これからは日本も他の欧米などの国と同じ様に「普通の国」として労働者に「自己責任」が求められる様になるでしょう。(現在フリーランスで活動しているデザイナーは一般的な日本のサラリーマンよりひと足先にグローバルスタンダードな働き方をしているのだと思います)
つまり、淡々と今いる環境でスキルアップを目指していただけでは上であげた、
◆何時でも転職出来る自信がある
◆個人で仕事を受注出来る
◆年収600万円以上
◆将来への過度な不安がない
◆クライアントや上司へ上手にNoを言える
↑この一人前の状態になるのは難しいのです。
これからの時代、デザイナーは1つの会社に頼りきりになるのでは無く、自立して一人前になる為に今まで以上に「適応能力」が求められる様になって来ました。積極的に転職したり、個人で仕事を受注出来るようにならなくてはいけないのです。
それにはやっぱり、色々な環境、色々な会社で、色々な働き方、を経験する必要があるでしょう。
3回位の転職経験をすればデザインスキルだけで無く、自然とその必要な「適応能力」が身につきます。
そういった意味で「3回転職して一人前」という言葉を受け止めてくれたらと思います。
転職は逃げでは無い。愚痴を言いつつ転職しない方が実は楽
日本では、転職に対してネガティヴなイメージを持っている方もまだまだ多いですよね?
中でもよくあるのは「転職は逃げ」という誤解です。「あいつは今の仕事が辛いから転職したんだ」という偏見です。
筆者自身、転職を何度か経験して感じた事はその逆です。
実は転職せずに、今いる環境で愚痴を言いながら働いていた方が楽なのです。
転職しなければ、新しく人間関係を1から築かなくて良いし、新しいスキルを身に付けなくても何とかなるし、新しい価値観に触れ自分の価値観をアップデートする必要もありません。
どう考えたって、転職しない方がやらなくても良い事が多く、心身共に楽なのです。
20代30代で転職経験がないまま40代デザイナーになってしまうのは危険なのでは?
「転職すれば今より楽な生活が出来るのでは?」という思いから転職するケースもあるのですが、その認識は少し甘いかもしれません。
デザイナーの転職、実はかなり大変です。(正確にいうと、転職活動中と新しい環境に慣れるまでの1〜2年間くらいが大変)
しかし、その大変な経験こそが一人前のデザイナーになる為に必要な試練なのは間違いありません。
全く新しい環境へ転職したり、デザイン業務以外の新しいチャレンジを始めたり、新しい人間関係で悪戦苦闘したりと、少なくとも3回の転職で大変な経験をすれば絶対に将来につながる成長ができます。
その最初のステップとして、20代または30代前半で新卒入社したデザイン会社から、別の会社への転職を早めに一度経験して置くことをお勧めします。40代になってから最初の一歩を必要に迫られても困ってしまうでしょう。やはり若いうちの方が新しいチャレンジはし易いです。
「デザイナーは毎日転職活動をする」くらいがちょうど良い
若いデザイナーさんは「毎日転職活動をしています!」と言えるくらいの気持ちで働いても良いかもしれません。
今の仕事は次のステップにつながるポートフォリオの1ページなのです。
情報収集やポートフォリオ作成など実はかなり時間がかかるので、日頃からリクナビNEXTや、マスメディアンなどデザイナー向け転職エージェントに登録しているデザイナーさんも少なくありません。
また「現在の自分の市場価値はどれくらいなのだろう?」と感じている場合MIIDAS(ミイダス) というサイトであなたの推定年収を測ってもらうのも面白いですよ。20〜30くらいの質問に答える必要がありますが、5分くらいで推定年収がわかります。現在のお給料よりも高い数字が出れば転職活動を始めるモチベーションにもなりますね。
最後に、SNSで同世代のデザイナーがどんなキャリアを歩んでいるのか?ビジネスパーソンとしての感度を高くしておくことも良いですね。
(人によって好き嫌いはあるので無理して意識高い系になる必要なないですが)
「一人の社会人として独立すること」それはスキルアップと同じ位デザイナーにとって大切な事なのです。
そのためには3回くらい転職して人生経験を積むのが良いのではないでしょうか?