レトロデザインが好まれる理由◎懐古趣味からみるデザイントレンド

レトロなデザインの存在感が日に日に強くなっていますね。

 

レトロデザイン・リデザイン・オマージュデザイン・リプロダクトなどなど。

デザインに関わっている人は敏感に感じ取っていませんか?

 

懐古趣味的とも言えるこのデザイントレンドはおそらく今後10年間、2025年位までは継続的に続いていくでしょう。今日はその理由をまとめてみました。

 

「デザイントレンドに興味のある方」「最近デザインする事に息詰まりを感じている方」の参考に少しでもなれれば嬉しいです。

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ぼくの視点

プロダクトデザイナーとしての僕の視点でお話しさせて頂きます。

 

ぺブルビーチ・コンクール・ド・エレガンスというイベントはご存知ですか?

毎年夏にカリフォルニアのモントレーという小さな町で開催されるクラシックカーの祭典です。レストアされたクラシックカーの「優雅さ」を競うコンクールで毎年1910年~1975年に作られた超貴重な車が全米から数百台と集まります。

価格にすると一台一台が「億越え」当たり前の世界です。

懐古趣味のイベントとしても間違いなく世界でトップレベルでしょう。

 

今年ぼくも参加してきました。

そこで、この記事でレトロデザインのトレンドを語る上でクラッシクカー文化を一つの切り口に設定させて頂きます。

 

①最高に贅沢なプロダクトとは?

➁ブランド価値を高めるレトロデザイン

➂物が溢れた世界の新しい価値観

 

この3つのテーマでお話ししますね。

 

最高に贅沢なプロダクトとは?

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今の時代、最高に価値のあるプロダクトは間違いなくヴィンテージものです。

最先端技術で作られたプロダクトより100年前に作られ現在の職人によって完璧な姿に蘇ったものです。その価値は芸術作品と呼べるまで昇華されます。

 

下世話な話になりますが、お金と名誉を手に入れた人たちが最後に手を出すものがヴィンテージプロダクトなんです。ぺブルビーチ・コンクール・ド・エレガンスを支えている人達もまさしくそんな資産家の人達。僕とは住む世界が違う人達が沢山いました。

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当時の最高の職人によるオリジナル作品、それを現代最高の職人の手作業による修復。

そこには多大なる時間と手間暇から「物語性」が宿ります。

ただの物質的価値だけではなく精神的価値が生まれます。

そして芸術品として生まれ変わります。

 

大量生産される現代において「物語」は価値を生む至上のスパイスです。

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ちなみにこのクラッシクカー文化はただの趣味ではありません。

資産家の趣味を兼ねた投資になっています。

日本では中古品の価値はどんどん下がりますが、アメリカや欧州では車・建築(住宅)などの中古品の価値は日本ほど下がりません。寧ろ年々上昇するものも多いのです。

 

おそらく日本人は自分たちが思っているよりも遥かに「飽きっぽい国民性」を持っています。「わび・さびの精神」「勿体ないという価値観」が海外から評価されている一方で、ドメスティックな経済活動は全く違うベクトルで動いているのが興味深いです。

 

ブランド価値を高めるレトロデザイン

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レトロデザイン、リ・デザイン製品が注目される一因として「ブランド価値をいかに高めるか?」という問題が深くかかわっています。

 

この問題を生み出したのは「韓国・中国ブランドの存在感が強くなった事」が原因で間違いないでしょう。

 

ブランド力=カスタマーの信頼です。

 

今までの製品は単体として品質が高くてコストパフォーマンスが高ければ強いブランドになり得ました。しかし韓国・中国がそこにさらに「格安」で攻勢をかけて来ました。

労働賃金・為替のメリットを生かした戦略です。かつて日本が世界を席巻させた状況と近いものがありますね。

 

それによって近年。

ブランド力=製品の品質、コストパフォーマンス

この考え方が崩壊してしまいました。

 

そこで先行ブランドとして米国・日本のメーカーは韓国・中国勢との差別化として「自分たちの歴史・物語」をブランド力を高めるために利用し始めようとしています。

「10年の歴史しかないブランドより50年続いているブランドの方が信頼できるでしょ?」というカスタマーへのメッセージです。

 

それが自社製品のリ・デザインやオマージュデザインが流行る理由です。

欧州のメーカーはその点、昔からブランド造りが上手いですよね。

 

ブランド力=企業の歴史・物語性。これを形にしたものが今のレトロデザインです。

 

物が溢れた世界の新しい価値観

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ブランド力を高める以外にもレトロデザインには時代の価値観に合ったメリットがあります。今は物だけでなくネットコンテンツの数も爆発的に増えました。

SNSではタイムラインに大量の情方が流れ込んできて、メディアからの情報も様々な方法でインプットされます。

 

「新しいものに消耗させられる日々に疲れた。。。」

 

そんな人々が沢山います。断捨離やシェア文化、ミニマリズムなどの流行からも分かりますよね。新しい物を毒だと捉える人は今後ますます増えるでしょう。

 

どこか懐かしさを感じさせるのが重要

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今後、カスタマーに好感を持ってもらうキーワードとして「懐かしさ」や「親近感」が求められて来ていると感じます。

今までは「いかに斬新なデザインにするか?先進性をどう表現するか?」という事にエネルギーを注いできたデザイナーが多いでしょう。

 

しかし今後は「先進性と懐かしさの共存」がデザイナーに課せられる一つの大きなコンセプトになっていきます。物が精神的に不足していた時のデザインと、物が溢れてしまった時代のデザインに求められる物は全く別物です。

 

まとめ

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①最高に贅沢なプロダクトとは?

➁ブランド価値を高めるレトロデザイン

➂物が溢れた世界の新しい価値観

という三つのテーマからこれからもレトロデザインのトレンドは続きそうだと感じませんか?

 

人工知能の急速な発達でシンギュラリティーへ一直線で進む最先端のテクノロジー。

その一方でスタイリング的にはレトロ・懐古趣味な方向へ進むトレンド。

 

「ソフトは未来志向」それをバランスさせるように「ハードはレトロにする」というのはかなりエキサイティングな現象ですね。

これからますますデザインは楽しくなりそうです♪

carbon

プロダクトデザイナー:新卒で大手インハウスデザイナー→フランスで3年働く→東京へ帰国したが働き方に疑問を持ち転職→テレワークをフル活用し湘南の海側へ移住→複業スタイルで新しい働き方にチャレンジ中!

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