【工業デザインとは?】現役デザイナーが解説!仕事内容や特徴
デザイナーにも色々な業種があります。
その中で工業デザイン・インダストリアルデザインという分野ではどんな仕事をしているのでしょうか?
工業デザイナー歴12年の筆者が説明します。
今日は仕事内容の簡単な説明と、工業デザイナーに向いている人の特徴についてまとめようと思います。
現在、進路で迷っている方の参考になれば嬉しいです。
工業デザインの仕事内容
主な仕事は工業製品のカタチを創る事です。
具体的なデザイン対象は
- 文房具
- スマートフォン
- カメラ
- 時計
- 家電
- 車
- バイク
- 飛行機
- 医療機器
など色々な製品を手掛けます。
とんでもなく大きなプロダクトから、手のひらサイズの小さなプロダクトまで本当に様々なモノをデザインするお仕事です。
仕事の流れは二段階
工業デザイナーの仕事は、大きく分けて
- 企画コンセプト立案
- 製品化のフェーズ
の2つに分けられます。
それぞれ異なる能力が求められるので、デザイナー毎に得意不得意もあります。
最終的にはどちらも高次元でこなせる様になると良いですね。
1.企画コンセプト立案
まず、話し合ってアイデアを出し合い、製品の企画やコンセプトを決めます。
この作業は、メーカーなどに勤めているインハウスデザイナーさんであれば、分業制でデザイナーではなく社内の企画部で行われる場合もあります。その場合は提示されたコンセプトに基づいてデザイン案を作成することになりますね。
デザイン制作会社であれば、デザイン会社の営業マン兼デザイナーとしてクライアントに企画提案をするケースもあります。
このフェーズではコミュニケーションスキルが求められます。全くカタチのないモノを莫大なお金をかけて開発する事になるので、関係者を説得出来るプレゼンテーションスキルやプロジェクト調整能力が求められます。
さて、コンセプトが決まったら、いよいよ具体的なデザイン作業が開始します。
ペンやphotoshopなどで理想像をスケッチして視覚化しるお仕事です。このフェーズが一般にデザイナーの仕事として認知されてるイメージと近いでしょう。
例↓
「想像・創造力」がデザイナーに求められる段階です。
スケッチスキルや3DCG作製が求められるのはもちろんですが、この段階でもチーム内のコミュニケーション能力も大切になります。
初期の段階ではあくまで「理想像」を考えます。
コストや設計条件など、工業デザインには様々な守るべき点がありますが、このフェーズではカスタマーが「純粋に欲しい」と感じてくれるものを想像する事が重要です。
デザイナーとしてはこのフェーズが一番夢があって楽しいかもしれませんね!
こういったアイデアスケッチを一人何案かづつ出し合って、社内コンペ形式でいくつかの案が選ばれます。
選ばれたデザイナーの案は次の段階に進むことができます。デザイナーの頭の中のイメージを実際の商品としてこの世に誕生させるための製品化対応フェーズです。
2.製品化のフェーズ
この段階では「問題解決力」が求められます。
先ほどのアイデアスケッチを元に、
エンジニアや工場の方々と、実際に製品として販売できるカタチに落とし込んで行きます。
コストや設計条件など、工業デザインには本当に様々な守るべきハードポイントがあります。
「自分の出したスケッチを、なるべく崩さず製品化する」が命題です。
時にはエンジニアと図面上で様々なディスカッションや交渉をする必要があるので、エンジニアリングの知識も求められる事があります。
様々な条件を満たしつつ、その中で一番美しいカタチを実現させます。
地道で泥臭い仕事となりますが、モノづくりでとても重要なフェーズですね。0.1mmまで拘ったり、1gを軽量化する為に図面調整をしたりなど、根気強さも必要です。
ここがしっかりとできる人はとても重宝されますね。ぜひアイデアやスケッチだけでなくこういった知識と技術も磨いてください。
工業デザイナーに向いている人は?
さて、工業デザイナーに向いている人ってどんな人でしょうか?
この質問に一言で答えるなら「美術と数学」が得意だった人でしょう。
かなりシンプルな答えですが、的は得ていると思います。
画を描くことが好きだったり、パズルや図形問題が好きだった人は向いている職業です。
きっと楽しく働けて、活躍もできるでしょう。
魅力的な製品をビジュアライズできる美的感覚やスキル。
細かい部分までエンジニアと製品を作り込んでいく際の問題解決力。
工業デザイナーに求められている事は広範囲に及ぶのです。大変ですがやりがいのある仕事です。
工業デザインを深く知るために
もっと工業デザインについて深く知ることができる、ものづくりの参考にしている書籍をまとめました。工業デザインは製品づくりの最も大切なフェーズです。詳しく知りたい方の参考になれば幸いです。
AXIS
最新の工業デザインからインテリアデザインまで幅広く特集するプロダクトデザイン専門誌です。世界で今注目のデザイナー特集や大変優れたベストデザインをチェックできます。何と言ってもこの雑誌はレイアウトやフォントまで大変こだわりのある、デザイン誌の中でもトップのセンスの良さが見どころです。フォントはこの雑誌のために作られたAXISフォントが使われています。写真のクオリティも、工業デザイナーにとって参考になる美さが光るものばかり。工業デザイナーなら必ずチェックしたい雑誌です。
デザインの骨格
今や日本で最も有名な工業デザイナーとなった山中俊治氏の著書です。山中氏は現行のJR東日本Suica改札機をデザインしたことでも有名ですね。とても面白い思考でものづくりをする方です。学生の頃は漫画家志望だったそうです。彼のデッサンの美しさ、プロセスの面白さはぜひ知っておきたいところです。工業デザイナー志望に必須の一冊だと思います。
プロダクトデザインのためのスケッチワーク
工業デザイナーには、創造力と、それを伝えるためのスケッチスキルが必要になる職業です。この本では、様々な工業製品のスケッチ例から、角度のつけ方、わかりやすく描く工夫など、初心者の役に立つデッサンのスキルが学べます。実用的な工業デザイン用のスケッチは、普段なかなか目にする機会がないのでこの本で例を見ながら勉強しておくと良いでしょう。「工業デザイナーってこういうことをする職業なのか」ということがわかる一冊です。
工業デザイナーは幅広い知識が必要な職業ですが、書籍なども少しづつ読んで現場の空気を感じて見てはいかがでしょうか?
現在高校2年の工業デザイナーを目指している者です。今まで、ものをつくることは好きで趣味で色々していたのですが、デッサン経験がないです。進学先はデッサンをしない入試方法で行けるプロダクトデザイン学科のある地方の美大にいこうと思っています。全く1からの状態からでも、大学で真面目に学べばプロダクトデザイナーとして就職できますか?自分の頑張りようだとは思いますが、ご返答よろしくお願いします。記事とても分かりやすかったです!
工業デザイナーと設計開発者の違いは何ですか?
アキさん
良い質問ですね。
現在はほぼ全てのメーカーで分業化が進んでいます。
デザイナーは商品のコンセプトや見栄えなど、ユーザーとのコミュニケーションに関わる部分を主に担当しています。開発前に商品イメージの絵を綺麗に描く事が多いですね。
設計開発者はそのデザイナーの考えや絵を商品として実現する為に必要な製造要件(構造強度や工場での作り勝手、法規対応など)に責任を持っています。
実業務では密にやりとりするので、お互いの職域にも意見を出し合って一つの製品を開発しています。
見栄え良いデザイン性が求められないような商品などはデザイナーが関わらず、設計開発者のみで商品をつくっている会社もありますし、小さい商品であれば分業せずに両方の役割を1人で担当されている方もいます。
ご返信ありがとうございます。見栄えはデザイナーが、構造は設計開発者が担うとのことですね。ところで、設計開発者とデザイナーの意見が衝突した時、どのように解決するのですか?
また、デザイナーはどの程度まで設計開発に意見を言い、設計開発者はどの程度デザインに意見をするものなのでしょうか?
アキさん
意見が衝突した時の解決は「とことん話合う」ですね。お互いにより良い製品を作りたいという気持ちは変わらないのでお互いに納得いくまで議論を重ねています。
二つ目の質問。
お互いにどの程度相手の領域に対して意見を言うのか?については正直言って扱っている製品によります。私は嗜好性の高い乗り物系のデザインをしているのそのケースでお応えさせて頂きます。設計開発の領域には断面図を作図したりなど結構口を出しています。対して設計者からは構造的に成り立っていない部分の指摘や空力でもっとこうした方が良いなどのアドバイスは受けていますが「デザインがカッコ悪いからこの様に変更するべき」などの意見を設計開発者から貰う事はありません。
デザイン変更要望は商品企画やマーケティング部の偉い方から頂くことは多々あります。
ご説明いただき、ありがとうございます。
進路について悩んでいて、漠然とした不安があったのですが。これを見て目指そうと思いました、内容も分かりやすく端的にまとめられていたのでとても参考になりました、ありがとうございます。
さな丸さん
嬉しいコメントありがとうございます!進路について悩んでいるとどんどん不安になってしまう気持ち分かります。
工業デザイナーの仕事は本当にやり甲斐があって楽しい仕事ですよ。私の周りのデザイナーさんもモチベーション高く楽しく働いている方が多いです。
是非こちらの世界へお越し下さい!
分かりやすく、参考になりました
コメントありがとうございます!
工業デザイナーのお仕事はホント楽しいですよ。是非こちらの世界へ!